摩擦円の考え方は本当に正しいのか?

皆さん摩擦円ってよくご存知だと思いますが、以前、インターネットでこんな記事を読んだことがあります。
個人の方が書かれたものです。

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タイヤのグリップ力には限界があり、そのタイヤが持つグリップ力を縦に100%使ったとしたら、横には使うことができない。
だからフルブレーキの最中は、ハンドルを切っても曲がらない。
タイヤのグリップ力が縦に50%だけ使っている状態なら、そこでようやく残りの50%を横に使うことが出来る。
縦に70%なら横に使えるのは残りの30%、縦に20%なら横に80%…。

これを実際グラフにしてみると、ちょっと待てよ、円にはならない。

縦に100%のとき、横に0%。
縦に50%のとき、横に50%。

だから、よく言う「摩擦円」というのはおかしい。
本当はダイヤモンド型だ!

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…といった趣旨の記事でした。
これを読んで、「なるほど!」と思った方も、「それは違うよ」と思った方も、「あれ、なんかおかしいな???」と思った方もいるかと思います。
が、僕にとっては衝撃的な記事でした。
この記事を書いた方が今まで読んできた摩擦円に関する説明は、どの説明も決定的に欠けているところがあったんだなと思うと同時に、もしもそういう説明が前提にあるとすると、このように考えることってある意味で素晴らしいことだな、と思ったんです。

結論から先に書きますと、このダイヤモンド型の図というのはZ=X+Y(ただしZ≧0、X≧0、Y≧0)という数式について、前後左右それぞれの方向のグラフをくっつけたものです。
この場合Zというのはグリップ力の最大値ですね。
それに対していわゆる「摩擦円」というのは、ベクトルの考え方をもとにした図です。
普通の数式のグラフと、ベクトルをもとにした図、それぞれ考え方が違うので図が違うのは当たり前なのですが、あらためて言われてみると混同するのも無理はないかもしれません。

簡単に違いが分かる図を描きますと、

グリップ力の最大値はN(ニュートン)で表せばよいので仮にZ=1000Nとすると、数式のほうは1000N=X+Yとなります。
この数式を前後左右のグリップ力それぞれについてグラフにすると、確かにダイヤモンド型になります。
ところがベクトルで考える場合は1000Nというのが矢印の「長さ」になります。
摩擦円を真円と仮定する場合は「360度どの方向についてもグリップ力は同じである」という前提になりますので、矢印の長さが変わってはいけません。

縦に50%なら横に50%、というのはなるほど言葉としてはまさにそのとおりです。
ただし摩擦円の考え方に従いベクトルで考える場合、ナナメ45度のときの縦または横方向の成分は1000Nにsin45°(≒0.7)を乗じた値になりますので、500Nにはなりません。
違和感を持たれる方もいるかもしれませんが、ベクトルとはそういうものです。

縦方向のベクトル成分を左右ナナメ方向45度それぞれに分解した場合でも同じで、500Nにはなりません。
横方向でも同じですね。

前後左右のグリップ力を考えるときにZ=X+Yというのはちょっと不適切かと思いますが、必ずしも「間違い」だとは言い切れないと思います。
もしも仮に「そっちのほうが分かりやすい」という方がいるなら、べつにそれでいいんです。
そういうことは重要じゃなくて、摩擦円が「ベクトルをもとにした図である」ということがきちんと説明されなかった、という事実が重要です。
要改善ですね。

ところがところがベクトルの説明など一切なかったしたら、数式をもとにして考えてしまう方がいても無理はないように思います。
そうだとすると、摩擦円を見たときに「なんかおかしいんじゃない?」と疑問を持つことも自然なことですよね。
この「なんかおかしいんじゃない?」というのはすごく大事なことで、この方は摩擦円についての事柄を「自分で考えることが出来ている」ということですね。
結果が重要なのではありません、自分で考えることが出来ているということが重要です。
素晴らしいですね!

 摩擦円は円である→本当か?
 バネは硬いほうがいい→本当か?
 バネが硬いのはよくない→本当か?
 トーコントロールをキャンセルするとスポーティになる→本当か?
 akiさんはお洒落でイケメンで大金持ちのエリートで歩いた足跡からお花が咲く→本当か?(笑)
 ※最後のはうそです(笑)

僕もそうなんですけど基本的に多くの人は、「なるほど!」と思ったことがあると他人に話したくなるものです。
インターネットにはそのような記事が溢れています。
ところが皆さんご存知のように全てが正しいとは限らない。
世間で言われていることをきちんと疑うことが出来て、自分なりに検証し、そして主張としてまとめ上げることが出来る。
ダイヤモンド型グラフの記事を書かれた方の場合はあと一歩というところで惜しかったですね、でも大健闘だと思います^^
摩擦円が円であると疑いもしないことと、「なんかおかしいんじゃないか?」と疑えること。
違いは明らかですね。

と、いうわけで摩擦円のお話でした。
言っときますが僕がエライのではありません、この方がエライんです(笑)
あらかじめどの程度の知識を持っているかどうかはその人の本質には関わりのないことです。
自由な発想でいろいろと考えようとする気持ちが大事ですね^^